ユーザーインタビューとプロダクトデザイン

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UIUXBusinessユーザーインタビュー

Designer - 2019 - Three Philosophers

ユーザーインタビューは、手がけるプロダクトの良い点、悪い点を明らかにしたり、プロトタイプ形成にも一役買ってくれるだろう。ただし、そこにかける時間や費用が必ずしも効果をもたらすとは限らない。プロダクトにしっかりと関わり、ユーザーインタビューの必要性について考えてみよう。

ユーザーの苦痛も変化する

ユーザーインタビューはどちらかというとユーザーの喜びよりも、ユーザーが体験上で苦痛に感じている部分を明らかにしてくれる。例えば通院するという体験を考えてみても、週に何度も大きな病院に通う年配の方は、一連の体験の中で感じるストレスをある程度受け流すことも可能だろうし、逆に年に数回しか病院とは縁が無いといった一般的な人であれば、様々なストレスをそのままの尺度で感じ取り、時に激しいほどにその痛みを評価するだろう。

そのペインポイントを計測するツールとなり得るのは、ユーザーストーリーマッピングやペルソナ、制作者のヒューリスティックなど様々だが、プロダクトが成長していくとある過程においてはユーザーインタビューが効果を発揮するケースがある。いずれにしてもその痛みを拾い上げていく際には、(有限な時間と予算のなかで)ユーザーの許容値と必要な施策のバランスをコントロールすることが重要になってくるだろう。

スティーブ・ポーチガルはその著書「ユーザーインタビューをはじめよう」で、「ユーザーリサーチの問題をいっそう複雑にしているのは、デザイナーやエンジニアがペインポイントととらえられていることを、人々が必ずしも痛いと感じていないという事実である。1956年にハーバート・サイモンがsatisfyとsufficeを合わせた造語satisficing最善の選択肢ではなく、満足できる選択肢を求めること)は、100パーセント喜んで受け入れるとまではいかなくても、人はそこそこのソリューションに対して寛容なことを言い表している。」と述べている。

ユーザーインタビューの必要性と費用対効果を考えよう

また自宅のリビングにあるラックには無駄なものも並んでいると語りかけながら、「率直なところ、私はどのリサーチプロジェクトもそこそこでよしとする。デスクトップ上にある整理されていないMP3ファイル、はまりの悪い食品保存用の蓋、絡まって長さの足りない接続ケーブルは、どれもそこそこという満足化の例だ。言い換えるなら、人は問題がもたらす痛みよりも、問題を解決する労力のほうが煩わしいと思うものなのだ。あなたがニーズと認識したことは、もしかしたら顧客にとっては問題なく容認できることかもしれない。彼らは食品をしっかり密閉できる容器に入れたいと思っているだろうか? もちろんだ。ではそのためにちゃんと手間ひまをかけるだろうか。多分かけない。」とUXデザインの核心に触れている。

ユーザーインタビューが有益と思われるのは以下のような状況・段階においてではないだろうか。

  • 何がデザインできるかを確信する前に、新しい機会を明らかにする手段として
  • 何をデザインするかについてアイデアが浮かんだ時、デザインの仮説に磨きをかけるため
  • 市場で実績がある場合、既存の製品やサービスをリデザインして再投入するため

上記も同著書からの引用になるが、ユーザーインタビューが効果を発揮するケースとそうでないケースの見極めは非常に重要になってくる。ユーザーインタビューの達人はプロダクトデザインの達人でもあるということが言えよう。

信頼を得る作法

ユーザーインタビューで引き出したいのは客観性である。それもなるべくなら、デザイナーの経験則や、各部署に蓄積されたデータよりも、何かしらの輝きがほしい。正直なところ、私はユーザーインタビューの達人ではない。むしろ、あれやこれや理由をつけてユーザーインタビューをボツにさせる達人かもしれない。なぜなら、若いスタッフが私の経験則に勝るインタビュー企画を作れないからだ。

さて、企画が通り、実際にインタビューが行われることになった際は、対象者とのラポール(信頼関係)の形成にはどのような作法が有効だろう。今月、原宿のとある美容院に2度目の訪問をした際、担当の若い子がやたらと親しげに、軽やかに会話を始めてきた。うれしさや驚きがあると、人は人に親近感を抱き、やがて信頼する。地位や見た目、人柄など様々なファクターはあるだろうが、バイアスは必ず外れる。ユーザーインタビューも対ヒューマンの施策であることを銘記しておこう。

まとめ

ユーザーインタビューとUXデザインは日本ではまだ浸透していないように思う。企業が募集をかける際や職務中のその定義のあいまいさは褒められたものではない。そして何とか収集したせっかくのデータも、ビジュアル化し共有する方法が稚拙なので、魅力的なものにならないのだ。どの過程で、何を行い、どのように評価しアジャイルに組み込んでいくのか、フレームワークを形成していく過程や作法にも心もとないものを感じる。学歴や、どこの会社で勤めてきたといったネームバリューは実際の業務上は何の役にも立たないのだ。このような観点から、プロダクトデザインの世界には、頭の良い、組織形成力のあるデザイナーの力が必要不可欠なのである。