UXデザインとマーケティング

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UX戦略マーケティングマーケティングにどう関わるか

Marketing - 2020 - Three Philosophers

マーケティングという言葉は「モノを売る」仕事をしている方のみならず、ほとんどの方が知っている言葉だ。レベルの差はあれど何らかのマーケティング関連の施策に携わったことのある人も多いだろう。加えて最近はUXという言葉もよく聞かれるようになってきた。ことにアプリのデザインの現場ではどの部署の方もUXという言葉を使っている。しかし感じるのは、それらしい(UX的な)アプローチが出来ている方がほとんどいないという点である。今回はUXデザインの少しばかり深い部分とマーケティングの関係性について書いてみよう。

マーケティングと事業戦略

マーケティングとは自社プロダクトの販売戦略のことである。簡単にいうと「消費者にモノを売る」という行為の最適化だ。当たり前のことでありながら、しばしばマーケティングの盲点になるのは「製品そのものに魅力がない」ということだろうか。前のめりになって、売れないものを売ろうとしているケースも多々見かける。

UXデザイナーとして様々なプロダクト開発に関わってきた経験上、製品作りからマーケティング活動全般の最適化には、以下の3点を監督するのがもっとも効果的だと思う。

  • 製品(プロダクト)に合った組織作り
  • 製品の検証およびLEAN・アジャイル工程の最適化
  • マーケティングの段階の確認と戦略立案

段階的に見ると、プロダクトデザインの世界では始めの二つが重要であるから、このサイトでも組織作りや実際の工程に関して様々なページを設けているが、今回扱うのはマーケティングの各段階にどのようなUX的アプローチを施していくかという点である。良い製品の作り方や、何をもって良しとするかについては今回はほとんど言及しない。

マーケティングの段階と時代の変化

何度も繰り返すが、マーケティングと言ってもまず製品ありきだ。そしてその製品は組織と工程によって生み出される。さらにそれがマーケティングフローのいくつかの段階のなかで、時に再度検証されながら、熟成され、収益化されていく。

マーケティングの世界では戦略のフェーズ化やターゲティングを行う際にファネルという言葉を用いることが多い。ファネルとは日本語にすると漏斗ということになるが、段階を設けて顧客の行動や気持ちを追っていく。自社のプロダクトに「気づいて」「興味を持って」「購入する」というような段階・流れを把握しながら様々な施策を打つ。

もちろんここに時代の流れが加わる。ユーザーの気持ちが変われば、ビジネスモデルも変わる。言ってみれば売り方が変わっていく。今日のこの瞬間、ユーザーが「どのように」気づくのか、興味を持ったら「どうするのか」といった分析や、適切なアプローチ(手段)を考えるのも大切になってくる。

この部分は、子供の成長に置きかえると分かりやすいかもしれない。小さなお子さんが、泣く、喜ぶ、興味を持つといったことに関する導線を見つけることは簡単だが、彼ら(彼女ら)が成長した後になっては、感情の動きも複雑になってくるだろう。モノよりもヒューマンタッチなコミュニケーションが大切になってくるだろうし、興味の対象も多種多様なものに変化する。マーケティングは業種や時代、フェーズごとに適宜カスタマイズが必要なのだ。

現代流の考え方とUXデザイナーの関わり方

さて、マーケティング手法のひな型などは、ウェブ上に情報があふれかえっているので、このページではUXデザイナーとして関わるのは戦略フェーズのどの辺りになるのかを考えてみよう。下図はマーケティング活動に関連した業務とそのタイミングをざっくり可視化したものだが、立案できる施策が山ほど存在することが、何となくでもお分りいただけるのではないだろうか。

グロースハックとマーケティング戦略フロー

グロースハックのページでも書いているように、マーケティングはユーザーが製品を認知することに始まるが、この認知(Awareness)のタイミング、アクションへのアプローチこそマーケティングの鍵となる。いわゆるウェブマーケティングはその典型で、WebページやSNSを通じて、モノや人を「知ってもらう」ことに注力する。「知る」というのは行動の起点であると同時に、その後もほぼ際限なく欲求が続き、様々な行動を補完的に支持していくからとても重要なのである。

サブスク時代の花形であるSaaS系のアプリケーションサービスなどでは、マーケティングとグロースハックの複合型ソリューション(施策)になるだろうか。オウンドメディアも展開するだろうし、テックタッチ のリテンション施策や営業への誘導など幅広く行うことが多い。この時人間(ヒューマン)の心理にも大いに注目する。行動経済学のナッジ的な手法で、丁寧かつ大胆に情報を伝えたり、フォームを一工夫するだけでCVRなどが飛躍的に向上することも多い。人間はとにかく繊細な生き物であるから、しかるべきタイミングを逃さない施策も数多く必要だ。UX手法のカスタマージャーニーマップユーザーストーリーマッピングは様々な場面で有用だが、マーケティングにおいても部署横断的なソリューションが期待できるから、様々な領域で補完性が高まり、製品すなわち会社運営そのものにも安定をもたらす。

パーセプションチェンジからリテンション、ファン化

マーケティングは時に信仰のようにユーザーに付き添う。知ることから始まったユーザージャーニーは、興味を持ち、購入しただけでは完結しない。その満足を持続させ、ついにはファン化させることで、いちおうの完結を見る。これらは前の段落で説明した通りだが、意識が変われば行動も変わる。例えばサブスクリプション型の音楽配信サービスを例とすると、

  • 月単価が安い(アルバム1枚の半分の値段だ)
  • たくさんの楽曲から好きな曲を聴ける(ロングテール的要素)
  • 実店舗だと入手困難(ロングテールに加え時代の変化・現実)

など魅力は様々だが、これを長期で続けていると、以前はディスクをCDプレイヤーに挿入して聴くといことが当たり前だったのが、いつの間にかスマフォなりタブレットで聴くことが当たり前となってしまうのである。

現行のマーケティング手法においては、(ファネル的には)購買検討層の気持ちを変化させることに重きを置いているが、ユーザーの意識や認識が変化することをパーセプションチェンジと呼び、さらに行動をも変えさせていく。営業の巧みなトークで車の販売をすることも、インスタに綺麗な写真をアップしてタピオカを飲みに来てもらうことも、手段は異なるものの、パーセプションヘの働きかけであるし、気が熟すと行動(ビヘイビア)まで変化する。

アップグレード:アップセル

あれやこれやで聴くスタイルまで変えられてしまったものの、音質などに不満を感じているユーザーにはアップセルが期待できる。音楽配信でいうと高音質版のストリーミングサービスなどがまさにそれに該当する。SaaS系であれば、フリーミアム施策などでユーザーを獲得し、カスタマーサクセスなどでリテンションしながら、アップセルに繋げていくのも一つのすじ道になるだろう。もちろん販売の伸びというものには様々な要因が絡んでくる。ファネルのうちの弱い部分を繕いながら、ユーザーの製品に対する親しみを高め(深め)ていかなくてはならない。

UXデザイン的には、とても深い部分になるが、各機能間の補完性を利用して誘導していく。フリーから上級会員までプランが3つあるなら、押しつ引きつつ、認知も深めてもらいつつ、ユーザーが製品に定着するようなUX設計を施していく。デザインと経営の統合については、チームビルディンググロースハックのページをはじめ、いたるところでアイディアをまとめているから参考にしてもらいたい。

まとめ:売れる製品作り

かなりざっくり書いたが、UXデザインは時にテクニカルな一面ものぞかせるし、データで拾いきれない部分はヒューリスティックに頼りながらデザインを決定することもある。(参考:UX戦略と課題の共有)

世界的企業であるAppleでさえも、その成長はUXデザインの最適化により成し遂げられたと言っても過言ではない。それはやはりモック文化である。まず形、モック、UIへの落とし込みを行い、ビジョンを共有し、アイディエーションを活性化させることで、成長を繰り返してきた歴史ではなかっただろうか。実際にベンチャーなどでもこのモック形式で行う戦略・アイディア共有の効果は抜群で、関連する他部署の方達が、戦略と実物の提示者である私に対しリスペクトの度合いを高めてくれるので、部署間の連携もスムーズになり、売れる製品像がどんどんと具体化していく。

UXデザインは経営手法である。商売はまずプロダクトありきであるから、そのプロダクトの深部を理解しチューニングするUXデザイナーは経営の基盤であり、コントロール(舵取り)をも担うのである。是非みなさんも本物のデザイン工程を学び、市場に新たな風を吹き込んでいただきたい。