Color Scheme - 2025 -
こんにちは。今このページをご覧くださっているのは、資格取得を目指している方やデザイン関連の仕事についている方など、色彩を学んでいる方がほとんどだと思います。
色彩をある程度「習得した」というのはどのようなレベルに達した時のことを言うのでしょうか。色彩検定の1級を取得した時(換言すれば、色彩に関する理論を一通りおぼえた時)でしょうか。あるいは、デザイン会社に就職できた時でしょうか。
定義はいろいろあって良いと思いますが、個人的には、やはりその方が色彩を操ると、画面が活き活きとしてくる、そういった段になってはじめて「習得した」と言えるのではないかと考えております。その点では、単に「色彩検定の1級を取得した」だけでは「習得した」とは言えないと思います。
デザインの現場で痛感しますのは、どんな立派な資格でも、(取得に必要な知識と)現場の仕事とは(要求されるものが)また別物だということです。
ビジネスと同様に色彩の働きも無限の可能性を秘めています。ですから、やはりアウトプットされる作品の質は千差万別で、作品から発せられるエネルギーに、作者のセンスや力量というものが如実にあらわれてきます。これは絵画作品であれ、ウェブデザインであれ、身のまわりにある電化製品であれ、すべてに言えることです。
さて、このページでは色彩の持つ機能性に関して様々な示唆があるトライアド配色について学んでみましょう。
トライアドは3色構成の配色です。色相環上で色相を6つに分割した場合、各色(相)を結ぶ線が(正)三角形を形成します。
信号機などで使われる青、黄、赤色の配列(配色)はみなさんもよくご存知でしょう。
トライアドは音楽用語では3和音を表し、例えば、ド・ミ・ソのCメジャーコードであったり、レ・ファ・ラのDマイナーコードであったりと、やはりひときわ明瞭な響きと表情を持ちます。
配色における効果もそれと同様で、2色構成から3色構成に変わるだけで各段に芸術性が増していきます。
こちらの図は、通常の正三角形型のトライアド配色です。「色相環を6分割したとき、ひとつおきの色相範囲からの色の選択」になると覚えると分かりやすいでしょうか。また、コントラス感が強くなりますとトリコロール配色と呼ばれることもあります。
各色を結ぶ線が二等辺三角形を形成するスプリット・コンプリメンタリー配色 も有名です。これは補色の色を2つに分割して作成します。ダイアード配色の発展形とも考えることができます。分割した2色の両方を使わなければいけないということもなく、片方のみ使った2色構成でも問題ありません。もちろんその際はトライアド配色ではなくなります。
スプリット・コンプリメンタリー(補色分割)配色に似ていますが、補色同士で色域的に使い色を混ぜ合わせるコンパウンド配色も有名です。4色以上になることもありますが、それはほかの配色も同様です。
States of Mind II Those Who stay - 1912 -
イタリア未来派を代表するボッチョーニの作品。画面左の小さな赤、左半分の青、中央上部の黄色のコントラストが強烈です。セカンダリー・カラー:2次色(緑、オレンジ、紫)であるグリーンの割合も高いですが、表情を持つ緑が、青や黄色(時代や文明)に翻弄されるという優位性の低さのようなものを示しているとも言えますし、赤青黄によるトライアドの機能で、画面が重たくなりすぎることを抑制する機能を果たしているともいえます。
Koningstein Station - 1916 -
キルヒナーがドイツ美術界の巨匠の一人であることは疑いのない事実ですが、彼が生涯を通じて残した作品群から感じるのは、絶対的な計算に基づいた配色というよりも、どこか無造作に、子供のこころのまま塗りたくっているような純粋さです。
この作品では、(右上と左下の)赤と黄色のコントラストをうまく利用しながら全体のバランスを制御しています。ドイツ表現主義でありながら、ポップな印象があるところも、彼の作品が多くの人に親しまれた理由の一つでしょう。
Broadway Boogie Woogie -1942-43 -
モンドリアンの最晩年の作品。赤、青、黄色のトライアド配色です。よく見るとグレーも混ざっていますがリズミカルで素晴らしいコンポジションです。モンドリアンには色の無い作品もありますが、画面を構成する一つ一つの素材(要素)をどこに配置するかということも大切であり、モンドリアンはその点でも優秀だったと言えますね。「最後の勝利に向かって」とは彼の言葉ですが、世を去る間際にこのようなポジティブな輝き、表現家として憧れるところです。
トライアド配色は、とにかく印象が強く画面が引き締まりますが、本ページで紹介したボッチョーニ、キルヒナー、モンドリアンの作品のように、デザインや芸術作品には構成力がより重要になってきます。
また、巨匠たちの作品が示しているのは、しっかりとした構成力を身につけた上で、緑などのセカンダリー・カラーの使い方も向上させる必要があるということです。各色が有す特徴的な力と、組み合わせ時の相対性を操ることが色彩マスターへの道になるでしょう。