ヒューリスティクス

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認知心理学行動経済学ヒューリスティックとは

Psychology - 2020 - Three Philosophers

このページでは、ビジネスの現場で耳にする機会も多いヒューリスティックという言葉が持つ意味について考えてみよう。

適切ではあるが不完全な手続き

ダニエル・カーネマンは著書「Thinking, Fast and Slow」のなかで、ヒューリスティクスの専門的な定義について「困難な質問に対して、適切ではあるが往々にして不完全な答えを見つけるための単純な手続き」としている。

個人的にはヒューリスティックと聞くと「経験則」という意味だと理解していたが、本来は「手続き」という変換作業的な意味合いが強いようだ。その「手続き」には、当サイトのあちこちで引用している「システム1・2」の切り替え時やその前後に介在する、人間を支配するバイアスや不確実性(あいまいさ)が大きく関係してくるのだ。

カーネマンは3Dによる錯覚のことを「3Dヒューリスティクス」、感情まかせの事実に基づかない判断を「感情ヒューリスティクス」と呼んでいるが、いずれも(人間特有の)自分にとって都合の良い答えを導き出すための、単純な手続きのことである。単純ではなく短絡という言葉のほうがよりしっくりくるかもしれない。

システム2が監督者から擁護者に変わってしまう

システム1とシステム2に関しては、行動経済学の肝要であるから、プロスペクト理論ほか各ページにて言及しているが、本来はシステム1の浅い考えを監督・統制する役割を担うはずだったシステム2が、システム1の考えを擁護する役割を果たしてしまうことがある点は要注意だ。つまりは、システム1の下した判断を正しいとする証拠探しをするようになり納得させてしまう点だ。「リスクが小さい」と聞いただけで「メリットが大きい」などと考えてしまうような時は、もう一度よく考えて、事実に基づく判断を心掛けてみると良いかもしれない。

まとめ

そもそも、ヒューリスティックスは「見つけた!」を意味するギリシア語の「ユーレカ」という言葉が語源となっている。前述のようにヒューリスティックとは「単純な手続き」と踏んで、人間の採用するその「手続き」にはどのような特徴があるのかを学ぶことが大切だろう。それを明らかにしてくれるのが行動経済学(心理学)における様々な研究事例なのである。