User Interface - 2019 -
ヒックの法則は、ヒック・ハイマンの法則とも呼ばれ、イギリスの心理学者ウィリアム・ヒックとアメリカのレイ・ハイマンから名づけられています。この法則は、選択肢の数とユーザーの反応時間の関係性を扱いますので、ユーザーインターフェースの世界では必須の知識となっています。
ヒックの法則を表す上図では、選択肢の数が反応時間に影響することを示しています。サイトやアプリに対する理解や、使用する端末によっても反応時間には振れ幅が存在しますが、選択肢の数がユーザーエクスペリエンスを決定する大きなファクターになることは間違いないでしょう。
確信を得なければ購入しないような自動車販売のサイトと、気軽に日用品を購入するサイトでは最適な設計方法も異なります。前者では比較という手段を用いて「確信」を与える工夫が必要ですし、後者ではフィーリングを大切にするなど、複雑条件でも意思決定をスムーズに行ってもらう工夫が必要です。
ヒックの法則はあくまで単純な選択時のみに適用され、複雑な意思決定時には適用されないとありますが、いずれにしても情報をチャンクという小さなかたまりで分類することは大切で、心理学者のジョージ・ミラーは、チャンクを構成する理想的な要素数をマジカルナンバー7±2(現在は4±1とも)と定義しています。ユーザーが新しい情報として扱わなければいけない項目などには、この5~9(あるいは3~5)という数字を意識するものも良いでしょうし、ケースによっては、ヒックの法則をそのまま信頼し、選択肢の数を極端に減らしていくのも有効的になるでしょう。
同時に、日本の都道府県やアメリカの州など、ユーザーにとって既知の情報の羅列は、さほど気にならないこともあります。わざわざチャンクを形成しても効果がない場合もありますので、工数やデザインとの天秤に乗せることも重要だと思います。
ヒックの法則はUIデザイナーの1年生が学ぶような超常識的なトピックであるのと同時に永遠の課題とも言えます。考察範囲が飛躍しますが、SaaS系のソフトなどで機能数がバーっと増え続けていくプロダクトがあります。とにかく機能間の補完性などはお構いなしで、開発者や一部のステークホルダーが機能をどんどんと追加していきますが、MVPやらホールプロダクトといった考えからも程遠く、ただ単にバランスが悪いだけのケースが多いです。
フィーチャー・クリープ(機能の増殖)は、市場獲得を遠ざける原因にもなりかねません。(スタートアップの目標であるキャズム越えも夢のまた夢にもなりかねません。) 複雑な条件下であろうが、ややこしい機能を受け入れてくれる人はほんの数パーセントと見積もっておきましょう。
KISSの法則 Keep it simple, stupid(シンプルにやれよ、バカ野郎!)という格言のような法則も同じようなことを言及しているのだと思います。簡素な構造でコスパと信頼性の両立を達成した自動小銃のAK-47は名機としてギネス級の普及を見せましたが、(銃なんて必要ない世界が良いのは当たり前として)ゲームであれ何であれ、あなたの理想・熱意の押し付けではなく、万人が使用する姿を考えながら設計を行いましょう。
ナビゲーション構築の良い例として、amazonのサイトが取り上げられることが多いですが、amazonに全ての答えがあるわけではありません。前述のように、企業により扱う商品も様々ですから、経験と新しい知識をミックスして、よりよいユーザーインターフェース、エクスペリエンスを追求していきましょう。