プロスペクト理論

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Behavioral Economics - 2018 - Three Philosophers

行動経済学でノーベル賞を受賞した、ダニエル・カーネマンで有名なプロスペクト理論を紹介しよう。損失回避時の単純計算的行動にパラドックスがあると認めたモーリス・アレ氏の考えに、人間の心理的要素(思い)を加味したのが、プロスペクト理論だ。

リスク回避

メロン プロスペクト理論

100パーセント美味しいメロン1つと、2つ貰えるが美味しい確立は50パーセントのメロン。この場合多くの人が前者を選択する。美味しいメロンを二つ貰えるという期待よりも、両方とも美味しくなかったらという不安が上回るからだ。人間に備わるリスク回避の傾向、すなわちバイアスである。(参考:フレーミング効果

価値関数における利益と損失

メロンの例では、確率的には五分五分の状況で、リスク回避の傾向に焦点を当てたが、Bの選択肢における「美味しいメロンが含まれる可能性」を少し上げても、やはりAを選択する人が多いそうだ。その傾向をプロスペクト理論では価値関数を用いることで具体的に説明している。

価値関数

人間はプラスよりもリスク・損失に敏感で、とりわけ損失が出始めた時は、損失を抱え込んででも取り返そうという気持ちに支配される。価値関数をグラフ化した上図をみるとよく分かるが、損失時の心理的振れ幅は、利益が生じている時よりもとても大きい。500円玉を一枚落とした。少し奮発して買った500円のプチトマトが腐っていたなど、500円という「収入として考えるとさほど大きくない」金額でも、損失となるととても大きく響いてくるのは、人間特有の心理が働いているからだ。

確率加重関数

また、人間は実際の確率よりも、確率が低い時は過大評価し、確率が高い場合は過小評価する傾向がある。プロスペクト理論では下図のように35パーセントあたりをしきい値として、その前後で評価の逆転現象を説明している。

確率加重関数

古代ローマ時代を起源とした生命保険が、現代まで売られ続けているのも頷けるだろう。側面的に考えれば、人間はそれだけ長い間、いわば不変的にバイアスを働かせ、ごく小さな確率におびえ、過大評価してきたではないだろうか。

まとめ

一転して、喫煙や飲酒によるリスクを過小評価する人が多いのも実情だ。共用部での喫煙により、何世帯からも苦情が来ている状況でも、報告を評価できないというのも、こういったバイアスからだろう。「自分には直接苦情は来ない」「自分は大きな病気にはならない」といった誤った評価を是正できなければ、結果は目に見えているのである。