Psychology - 2018 -
本質的に表現する内容は同じでも、その表現方法により受け手側の印象は大きく変わる。認知心理学ではそのバイアスの原因の一つとして、フレーミング効果をあげている。
お笑い番組でこんな調子のコントがあった。コンビの一人が「国民的な人気の番組が視聴率70パーセントを記録しました!」と切り出したところ、相方はあまり同調せずに「30パーセントの人が見ていない!」と返す。
70パーセントという数字にフォーカスせずに、30パーセントの人が見ていないと語れば、かえって不人気な印象すら与えてしまうから不思議だ。離婚率10パーセントのチャペル、非リピート率30パーセントのエステ、などと言われてしまえば、実際は良い数字だが敬遠してしまうだろう。(参考:プロスペクト理論)
良いものを良く見せるのは簡単だが、悪い状況にもそれを好転させる因子が潜んでいることが多い。それを具体的に発見・提示したり、見方そのものを変えていく手法がリフレーミングだ。例えば、東大入試に失敗して落胆している子に「慶応でも立派じゃないか」と励ましても、フレームの大きさ(彼の考えている範囲)は変わらないから効果は望めないが、「ハーバード以外はどこも同じだ!」と叱咤すれば、フレームが拡がり、東大が枠の端から追いやられていくので、それなりに心境の変化が起こる筈だ。
携帯料金の最安値を謳った広告など、世間は紛らわしく分かりにくい情報・仕組みで溢れかえっている。総務省は、消費者契約法、景品表示法などを効力として、事業者に対する監視を行っているので、ビジネスの場でフレーミング効果を過剰に利用すると、ペナルティが発生する可能性がある。小手先のテクニック・知識はかえって仇となるから気をつけよう。
数字や謳い文句、写真の使い方も重要だが、空虚なものをフレーミングしたところで長続きはしないし、年配の人がわけの分からない契約プランにハンコを押す姿などもみたくない。芥川龍之介の小説ではないが、分かりやすくステップ化されていれば、興味も湧いて理解も早まるわけだから、自ずと最後まで進んでいくのだ。お世辞も装飾も無い、文字だけの世界、いわばフレーミング無しでも、十分効果があるということも銘記しておこう。