マイクロインタラクション 1/3

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UI・UXインターフェースマイクロインタラクション

User Interface - 2019.1.13 - Three Philosophers

先日、私は母親にiPhoneをプレゼントしたのですが、真っ先に教えたのは物理的なサイレントスイッチの操作による「マナーモード」への切り替え方でした。ガラケーに比べてボタンも増えますし、公共の場での不安を取り除くことが優先事項だと思ったからです。今回は、この「消音への切り替え」操作が原因で起こった有名な事件を振り返りながら、細部の操作性を追求していくマイクロインタラクションについて語ってみたいと思います。

それは荘厳な世界をも破壊する

オライリー社から刊行されているダン・サファー氏の「マイクロインタラクション UIUXデザインの神が宿る細部」の冒頭では、クラシックコンサートの演奏中に起こった出来事が描写されています。その際の様子をNewyork Times誌から引用してみます。

The unmistakably jarring sound of an iPhone marimba ring interrupted the soft and spiritual final measures of Mahler’s Symphony No. 9 at the New York Philharmonic on Tuesday night.
The conductor, Alan Gilbert, did something almost unheard-of in a concert hall: He stopped the performance.But the ringing kept on going, prompting increasingly angry shouts in the audience directed at the malefactor.

それは、ニューヨーク・フィルによる、マーラーの交響曲第9番のフィナーレで起こります。最前列にいた年配男性のiPhoneのマリンバ(アラーム音)が甲高く鳴り響き、コンサートホールを包む荘厳な空気を切り裂きます。(これも珍しいですが、音の出所が最前列からだったためか)指揮者が演奏を中止し注意します。しかし音は鳴りやまずに、観客の怒りが男性会員に向けられるというものでした。

マナーモード時の挙動

いつでしたか、ストラビンスキーの「春の祭典」と、マーラーの交響曲のどちらかを見に行くという機会がありまして、私は春の祭典を選択したのですが、華のある人気作品と比べても、マーラーの交響曲の売れ行きは爆速でした。演奏家の友達に伝えたところ、マーラーの荘厳な音楽は、観客のみならず演奏家も感無量となることから、絶大な人気を誇っているそうです。その演奏の最後の最後、会場全体が荘厳な世界に包まれている時に、無情にもマリンバが鳴り響いたのです。

どれだけこの男性に非があるのかと思いましたが、実はこの方、しっかりとマナー(消音)モードにしていたのです。冒頭で母親にマナーモードの操作を教えたと書きましたが、デフォルトの設定ですと、アラーム音はマナーモードでも鳴ってしまうのです。この男性会員は大のクラシックファンで、いくつかのメンバーシップを購入し、普段は咳払いの音や、タイミングの悪い拍手にうんざりしていたそうで、「まさか自分が(迷惑をかけてしまうとは)」と語っていました。それだけ細心の注意を払う人ですら、仕様の罠に嵌ってしまったのです。

この事件では、iPhoneの機能自体への賛否から、会場での案内が行き届いていないこと、着信音そのものを皮肉ったものなど、様々な議論が起こりました。ダン・サファー氏自身も「マナーモードでアラームが鳴らなかったら、毎朝何千という人が寝過ごしてしまうだろう」と語っています。

マイクロインタラクションとは最小の操作単位

さて、前置きが長くなりましたが、このクラシックコンサートで起こったような出来事を防ぐにはどのような設計が求められてくるのでしょうか。iPhoneを「スイッチ切り替えの操作感が良い」という理由で購入する人はほとんどいないと思いますが、マナーモードへの切り替えは購入した誰もが使う重要な機能になります。マイクロインタラクションを意識した設計では、製品そのもの:マクロに対して、細部の操作をマイクロ(ミクロ)と定義し、応答性や明確さなど、ひとつひとつのインターフェースの質を高めていきます。
次のページでは、アラーム機能というマイクロインタラクションにスポットを当ててみましょう。