Typography - 2025 -
Helveticaは欧米のスタンダード・フォントのひとつです。どっしりとした堅実性と安定感を備えながら、あたたかみ(個人的感覚です)まで感じさせてくれるような素晴らしいフォントです。
おおまかな歴史を辿りますと、先ずスイスのハース社が1957年にNeue Haas Groteskという書体名で発売、後にラテン語でスイスを表すHelveticaという名前に改められました。さらに後続の会社がイタリック体なども整え、Helevetica Neueという名前で発表しています。(ウェイトなどの詳細は後述)
現在ではApple社がHelveticaをベースに可読性(視認性)の面などを改良して、San Franciscoというフォントを制作、OSのデバイスフォントとして採用しています。
フォント名 | 種別 |
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Helvetica | 1957年発表のオリジナル書体 light, Regular, Bold(斜体はOblique) |
Helvetica Neue | 1983年発表の改良版 新しくUltraLight, Thin, Mediumという3種のウェイトを追加し、ウェイト間のバランスを整えながら、コンデンス体、イタリック体も追加 |
書体デザイナーの小林章さんはHelveticaの(長文の読書体験におけるUniversと比較した)印象を「(ヘルベチカは)19世紀サンセリフ体の荒けずりな感じをかすかにとどめていて、音に例えるなら工場のモーターの唸り、または都会的な喧騒のような雑音を含んでいる(それに対しUniversは静か)」と評しています。
フォントはその大きさによっても性格が変わってくるため、1枚もののデザインをのぞいては検証が必要で、小さなサイズにすると可読性(視認性)が悪くなったりします。単純な美しさの面のみならず、部分部分に改良が加えられ現在に至っていることや、Universeのような対抗馬も存在する事実も認識のうちに入れておくと良いかもしれません。
デザイン事例ではNeueのバージョンを使用してみました。やはりバリエーションが多い方が便利ですね。
う〜ん、タマリマセン。なぜ私はこの無骨な書体に惹かされてしまうのでしょうか。最後のまとめで少し書いてみましょう。
冒頭で「あたたかみ」と書きましたが、これは数年前に書いたものですので(今となっては、そう感じた)感覚的な部分を思い出せません。おそらくは、理路整然としたデザインを好む私が、この機械的で律せられた無機質さのなかに安心や信頼を感じたのと同時に、どこかで(隠れていた)未完成さにも共感を覚えていたのかもしれません。
Helveticaのデザインの意図するのは(前者の)「信頼や正確さの伝達」だと思います。そしてそのメッセージは欧米を中心に多くの人の心を捉えました。輸入製品や日本国内のコーポレート・ロゴなどに多数採用されているだけでなく、実際に流行の先端で利用されていますので、Appleの製品を所有している方などは、意識せずともその機能美の伝承の歴史とも時代を共にしているのです。