Typography - 2025 -
Gill Sansは芸術家のエリック・ギルがデザインしたフォントで、ヒューマニスト・サンセリフ体に属します。後述しますが、彫刻こそエリック・ギルの主たる表現方法でしたので、CopperplateやTrajanなどもそうですが、ウェブなどでみかける書体が「彫る」という行為の産物だと考えますと、歴史や愛着を感じられるようになるでしょう。
エリック・ギルは美術学校で学んでいた頃、遠近法の描画で賞を受賞したこともあるそうで、その後建築学の訓練が肌に合わず、石工のクラスや書道の勉強を始めたそうです。このページで紹介している書体デザインのほか、聖堂の碑文や彫刻など数々の作品を残していますが、職業を一つに限定するのであれば彫刻家であったのです。書体Gill Sansの制作は彫刻家になろうと決意してから18年後に制作(1927年〜)されたもので、20世紀で最も成功した書体(の一つ)の誕生には相応の技術的裏打ちがあったと思われます。
フォント名 | ウェイト |
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Gill Sans | Mac OS収録ウェイト:Regular, Italic, Light, Light Italic, SemiBold, SemiBold Italic, Bold, Bold Italic, UltraBold |
Mac Os(High Sierra)にバンドルされているGill SansにはLightからUltra Boldまで9種類のウェイトがあります。デザインで用いるのであれば、どちらかというと、BoldやSemiBoldくらいのウェイトの大文字に魅力があるフォントだと思います。
ギルサンズは質感も豊かですが、硬派な印象があまり前面に出ません。生誕の地イギリスなど、ポップ・カルチャーにもフィットしそうです。
エリック・ギルが工芸学校で(前述の建築学の訓練が肌に合わず、石工と書道を学んでいた頃)師事したエドワード・ジョンストン氏(Central School of Arts and Crafsの講師)は書家としても活躍していましたが、ロンドンの交通システムではジョンストンが設計した書体をオリジナルとしたものが長らく使われてきました。そのしっかりとした土台の中にGill Sansは生まれたのです。