ゴルディロックスの原理

UI・UXエクスペリエンス松竹梅の法則

Psychology - 2019 - Three Philosophers

日本では松竹梅の法則とも言われる「ゴルディロックスの原理・効果」は、選択肢が3つ並ぶと、真ん中のランクのものを選択しようとする心理・傾向のことだ。童話「3匹の熊」に登場するゴルディロックスという少女が、3種類用意された乳粥のうち、真ん中の温度のお粥を選んだというシーンに由来している。

鰻店におけるゴルディロックス

そもそもゴルディロックスの原理として掲げられている「選択肢の中で中程度のものを選ぶ」という傾向は幼年期に顕著な「発達上の特性」のようなものだそうだ。その傾向は、飲食店における(ランク別の)注文状況などにも結果としてあらわれているようで、松竹梅の法則とも呼ばれながらビジネスにも組み込まれている。

ただし今回は自分の体験をもとにこの原理をのっけから否定してみます。

とある夏の日、「並・上・特上」が用意されたうなぎ屋で、顔見知りの集団と遭遇したのだが、居合わせたゴルディロックス(おっさん)たちは全員が迷いなく「特上」を注文したのだ。特上は3,200円だったが、毎日食べるものではないし、夏の日にちょっとでも厚みのある「うなぎ」を平らげて、スカッとすることが主目的だったからだ。

このように松竹梅の法則も時と場合によるので、やみ雲に「3つ並べて真ん中の購入を促そう」では上手くいかないだろう。「捨て色」という売る気のないカラーの端末も用意して、他の引き立て役にするといったこともあるが、販売時のパターンは、その都度最適なものを用意すべきなのである。

マクドナルドでのゴルディロックス

成人してからは年々行かなくなりつつあるマクドナルドだが、ハンバーガー、ダブルチーズバーガー、ビックマックのうちどれが一番売れているかというと、ダブルチーズバーガーが僅差で(ビックマックをおさえて )勝利という結果もあるようだ。ここでもハッキリとした結果ではないため、露骨に松竹梅の法則を当てはめるわけにはいかないが、ファストフード店では鰻店に行くほどの意気込みがない分、(選択肢が3つしかないのなら)真ん中のサイズのものを注文するという心理も、あながち間違っていないとも思う。前述の鰻店で出くわした同僚を含む一団も、横の本格的ハンバーガー店から流れてきた(お店が満員で入れなかった)ゴルディロックスたちだったが、そのハンバーガー屋を別途訪れた際は、種類が多いうえにすべてが巨大だったため、せっかくだから真ん中くらいのものをと、何となくの心理に流されて注文してしまった記憶がある。

プロスペクト理論と松竹梅効果

値段など状況によって決定は大きく変わるが、全くの新規の情報や不案内な状況を前にしては、「とりあえず真ん中」という心理に陥ることは否定できない。プロスペクト理論などからも分かるように、人間には損失に対しての「ひときわ強い防衛本能」が備わっているから、未知の情報に対してはシンプルな選択肢を与え、システム1思考のまま「真ん中のものを選んでもらう仕様」にするのも間違いではないかもしれない。

注意点としては、戦略が逆効果になりバイアスをかけてしまうケースもあるということだ。実は前述の鰻店ではあまり満足できずに、自分自身に「3,200円の特上でもこの程度なら、1,000円前後のうな重はあまり美味しくはないだろう」というバイアスをかけてしまったのだが、都内でチェーン展開する某店の「格安うなぎ」がことのほか美味で、「なんだこんなにイケるのか」と鰻無しの空白期間を少々くやんだ経験がある。やはり特上には特上の、相対的にしっかりとしたレベルの商品を用意することが大切だろう。

まとめ

その昔、北品川の登龍というお店で「ここはごはんが小盛だから」と言って若手を悶絶させたことがあるが、「敵を知り己を知れば百戦危うきにあらず」と言われるごとく、松竹梅と言う魔法を扱うためには事前の調査・マーケティング手法が重要になってくることだろう。ファッションの世界なんかでも、皆さんご存知のユニクロをはじめ、ユナイテッドアローズ、価格帯的にはその上のブランドもあるだろうが、それぞれの戦略の元で、それぞれが繁盛しているわけだ。超特盛り、小盛りで成功した牛丼チェーンもある。成功に至るための努力は惜しんではならない。