Psychology - 2018 -
何らかの目立つ特徴がもとで、全体的な評価が歪むことがある。このページではハロー効果と呼ばれるバイアスについて学んでみよう。ハローとは光背、後光のことだ。
そもそも後光というのは、むしろバイアスを解いた時、言い換えれば、曇りの無い目で物事を捉えた時に見えてくるものだが、心理学での「ハロー」は目を眩ます少々厄介なフィルターとして用いられている。
ある社員が有名企業でたくさんのお金を動かしてきたと聞かされると、人事からシステム運用まで何でもこなせそうにも思えてくるが、こういったバイアスもハロー効果のひとつだろう。間近で接すれば欠点にも気づくが、距離を置くと光が差し込んでしまったりするし、限られた情報のみだと格付けはなかなか変わらない。これは信頼ではなく、明らかにバイアスだ。
逆に、悪い特徴のほうを先にクローズアップした場合はどうだろう。ヤンキースの田中投手は日本時代はパ・リーグに所属していたが、セ・リーグのとある球団のファンが、交流戦でたまたま打ちこまれる田中選手を見ていたとしよう。しかもじっくり見たのがその一試合だけだったとすると、田中投手が積み上げる実績にも、彼は運が良いだけで、パ・リーグはもちろん、メジャーもレベルが低下していると考えてしまうかもしれない。このように他者への評価は、ごく浅いレベルで行われ、その人に都合よくインプットされていく。よく「最初が肝心」と言われるのも、こういった人間の特性が働いているからだ。
冤罪被害などが一生の傷になってしまうのもハロー効果の一つだろう。本当のことではないウソや噂でも、一度情報としてキャッチしてしまったものは完全には消えていかない。行動経済学で著名なダニエル・カーネマンは「人間は物事を深く考えたがらない傾向があり、普段はシステム1という領域で処理を済ませようとし、深く考えるシステム2への移行を避けようとする」としている。人は自分に影響を及ばさない距離で起こった「嫌疑」などとは向き合おうとしない。システム1が「あいつは悪い奴だ」という評価を下せば、おおかた、それで終了なのだ。
あちこちに存在する偽のハローには注意が必要だ。例えば、医療系のサイトで良い評価をされていた病院に行ったら、掲載されていた情報と全く違っていたという経験はないだろうか。その腹立たしい気持ちをそのまま投稿しても掲載されないし、サイトオーナーに質問しても返信は来ない。病院からお金をもらっている運営会社が、情報を好きなように操作しているのだから当然だ。
本当によいものにアクセスするには、信頼できる人を作り、システム2を働かせ、情報を共有、選別していくのが一番なのである。