Photography - 2018 -
今回はPhotoshopの色調補正の機能のうち「シャドウ・ハイライト」の効果を見ていきます。サンプルとして、HDRのページなどで語っているイレーヌお嬢さんの色調を補正してみましょう。ピカソやブラックの構成作品では少々色調がおかしくてもそんなに問題はありませんが、印象派の一部の作品は同じような扱いだとまずいですね。
Mlle Irene Cahen d'Anvers - 1880 -
ビュールレさん所蔵のルノワールの作品「イレーヌ嬢」です。2018年絶賛来日中で全国を旅していますのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。初見の方は上のイメージでも十分満足するかもしれませんが、これですと実際のオーラがまるでありません。パブリックドメインの画像はたいてい色みが悪くこのイレーヌ嬢も同様ですが、それ以上に実際の輝きを伝えるのが難しい作品でもあるのです。
「ウィンドウ」メニューから「ヒストグラム」を表示してみましょう。今回素材とするイレーヌ嬢は左側にピクセルが偏っています。これは画像に黒よりのピクセルが多いことを表しています。ルノワールの華やかな作品にしては暗すぎる状態です。
色調補正で「明るさ・コントラスト」を選び、「明るさ+35」で加工しても、ただ白くなっただけのようで階調の変化が乏しいですね。
色調補正で「シャドウ・ハイライト」を選び、「シャドウ 量 35%」で加工すると、背景も生命を吹き返したような感じで、全体的な階調も豊かになりました。
ヒストグラムで効果の違いを確認すると一目瞭然です。オリジナルが薄いグレーの山ですが、「明るさ」の変更だと山の形状にほとんど変化がなく一部に破綻のようなものも見られます。反面、「シャドウ」の変更だと暗いほうに傾いていたピクセルが均等に持ち直しているのが分かります。
実際のところ、シャドウの値を少し変更したくらいでは、肉眼で捉えるイレーヌ嬢の素晴らしさには程遠いです。人間の視覚に大きく劣るカメラの表現力を補うのがphotoshopの色調補正ですが、素材を前にすると、単純に「明るさ・コントラスト」を変更させることくらいしか思いつかないと思います。RGB、HDRのページでもイレーヌ嬢とともに語っているのが階調表現のことですが、加工の幅を広げるためにも「シャドウ・ハイライト」という機能がもたらす効果も覚えておきましょう。